一章 ルージュ舞踏会にて

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それからしばらく。 私は今、廊下を全力疾走中 ――――ゼエッゼエッ…… だ、脱出成功。 お化粧直しで控えに戻ったすきに、ダッシュで逃げてきた。 コルセットも投げ捨ててきたし、あーっ爽快っ! と、誰かに会うと面倒だわ庭にでておこ。 城の表側の大きな庭より横手にある場所、開け放たれているホールの窓から音楽や明かりが漏れ出ているから足元が見えないほど暗いわけではない。 そもそも、今日は満月だしね。 足をとられるので、ヒールの靴は手に持って柔らかい芝生の上を歩いていくと私のお気に入りの場所が見えてくる。 城下が見渡せる、私しかしらない穴場スポット。 ところどころに見えるあかりが美しい。 町より少し高台に立っているこの城だからこその景色だね。 と、どこからか草を掻き分けるような音がした。 ………メイドさん達探しに来たのかな? 息を潜めていると、闇の中にシルエットが――メイドとは違う。 恐らく、男の人だろう。 「――――どなたですか?」 暗闇から声が聞こえた事に驚いたのかその人が警戒の眼差しでこちらを見るのがわかった。 ってか、何でここに? 声かけちゃったけど、ユウカイとかいう犯罪をする人だったらどうしよう? まぁ、なるようになれか。
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