一章 ルージュ舞踏会にて

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キラキラと輝く町並みに視線を向けたまま、しばらくの沈黙。 「レイン様は、確か傭兵様でしたよね?」 私の頭には全ての貴族の名前と家柄、王家にとっての利益、不安要素、など様々な情報が入っている。 そして彼、レインは傭兵……いや勇者というのかも。 彼の噂はいろいろきいている。 ほんとにいろいろ……ね… 「そうですよ?貴女様とは違う世界の人間です」 「違う世界の人間……クスッ…そうかも。所詮私は籠の鳥、逃げ出してもやっぱりここも城の中。そして国のために結婚して跡継ぎを産んで窓の外に広がる世界を眺めながら死んでいくの。なんて……貴方に言ってもしょうがないですわね」 自嘲的に笑いながら言う私の顔をレインがまじまじと見る視線をかんじる。 こんなことを言うつもりはなかったのに。 ……自由に世界をとびまわる彼を見ていたら心の底から溢れてきてしまった。 「ごめんなさい、今のは忘れて……」 「…俺が囚われの姫君を救い出してやろうか?」
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