酉ノ刻

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少女は、そっと、優しく少年の背に手を回した。 抱きしめた、とは言えないようなものだった。お互いのぬくもりを共有しただけに過ぎないかもしれない。だが、少年、そして少女にとってもそれは十分すぎるほどのぬくもりだった。 どれくらいの間そうしていたか、よくわからない。社殿からでた少年と少女は、無言のまま木立を抜けた。 「明日は学校か」 「そうだね」 「面倒くさいな」 「まあね。でも、良かった」 「何が」 「なんか、いろいろ」 夏の夜風は、心地よい。生ぬるいけれど、それがいい。変わり映えしない喧騒を通り抜け、二人は参道を降りていった。
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