1人が本棚に入れています
本棚に追加
少女は、そっと、優しく少年の背に手を回した。
抱きしめた、とは言えないようなものだった。お互いのぬくもりを共有しただけに過ぎないかもしれない。だが、少年、そして少女にとってもそれは十分すぎるほどのぬくもりだった。
どれくらいの間そうしていたか、よくわからない。社殿からでた少年と少女は、無言のまま木立を抜けた。
「明日は学校か」
「そうだね」
「面倒くさいな」
「まあね。でも、良かった」
「何が」
「なんか、いろいろ」
夏の夜風は、心地よい。生ぬるいけれど、それがいい。変わり映えしない喧騒を通り抜け、二人は参道を降りていった。
最初のコメントを投稿しよう!