犯人

2/7
前へ
/402ページ
次へ
 二月の風が、二人の間を駆け抜けていく。暦の上では、春はもう目の前だというのに、その冷たさは身を竦ませるほどだった。しかし、対峙する人物の一方は、その冷たさに身を震わせたのではなかった。 「あなたが、犯人ですね?」  男の静かな声が響く。 「何のことでしょう?」  女は、ゆっくりと首を振る。
/402ページ

最初のコメントを投稿しよう!

257人が本棚に入れています
本棚に追加