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松岡は問いかける。すると、睦美は少し考え、
「その前に、こちらに住んでいる方のことをお話しさせていただきますわ。それからでないと、少し理解しにくいかも知れませんので」
そう言って睦美はこの屋敷の住人について説明したが、その言葉を一言一句再現するのは長々としすぎるため、それをとりまとめた内容を記すにとどめることとしたい。
家主の吉川重吾郎は齢七十二、一線を退いた後は趣味の美術品収集に精を出す傍ら、屋敷に数人の、彼が目を掛けている芸術家の卵を住まわせ、彼らのパトロンを気取っていた。
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