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『やっぱりここだろ!』
そう言うと一樹は¨Destiny's¨と描かれた看板をくぐって中へ入っていった。
そこでは騒々しい音が鳴り響き、皆無言で画面に向かいながらボタンを連打していた。
『この歳になってゲーセンてのもあれだな・・・。』
哲也は顔の横をポリポリ掻いた。
『おっ!まだあるぜ!?熱番Ⅱ!!』
どうやら一樹は全く恥ずかしく無いらしい。子供みたいにはしゃいでいる。
熱番Ⅱとは熱血番長Ⅱの略である。高校生の時よく一樹と学校をサボり、熱血番長Ⅱの技を磨いていた。特に哲治というキャラクターが好きでよく使っていた。自分と同じ哲という字が入っていたからなのだが・・・。
『テツこのキャラクター好きだったよな。獅子威し!!』
一樹は両手で拳を作り、小さい万歳のような格好をしている。
『お前まだ覚えてんのかよ。』
『ああ、当たり前だろ?あんなの忘れる訳ないだろ。』
獅子威しとは哲治の必殺技だ。いわゆるネコパンチのライオンバージョンといったら分かると思う。
問題なのは俺が実際にケンカで使おうとしたことだ。もちろん大した威力がある訳でもなく、必殺技を出した瞬間周りの空気が凍りついたのは言うまでもない。
『あの時は使えると思ったんだよ。』
『あぁ、テツの顔マジだったよ。マジで笑えた!よしっ!じゃあちょっとやってみるかな。』
一樹は少し笑った後、腕をまくると椅子に座った。
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