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『な、なんだよ。』
思わずたじろいでしまった。こいつがキレた顔なんて滅多に拝むことは出来ない。あまりに唐突で、さすがの俺も驚いた。
『あっ、わ、悪ぃ。昔書いただろ?ここに[双頭の龍は永遠なり]ってさ。それがもう塗りつぶされてて、俺もさ、もう昔みたいには出来ないし、なんか昔のままのテツが羨ましかったんだよ。』
あきらかにうろたえている俺を見て、自分が激昂したことに気付くと一樹はすぐに謝った。
『あ、あぁ、いいんだよ。お前もいろいろ大変なんだな。』
一樹は自分が悪いと思ったら素直に謝れる男だった。俺は一樹のそういうところが好きだったし、羨ましかった。だがそんなこと恥ずかしくて言えるわけはなかった。
『お前も変わってねぇよ。』
『そうか?やっぱりテツに会って良かったよ。昔を思い出せた。なんか吹っ切れたぜ!』
一樹も何か思い詰めていたのだろう。これくらいのことで気が晴れてくれるのなら安いものだ。
お前の痛みは俺の痛みだ。
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