科学者と幽霊

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「もしもし、そこゆくあなた」 交差点でぼんやりとしていると、不意に声をかけられた。声の方へ顔を向けると、存在感が薄い、ふわふわとした男がいた。 なんだこいつは? 「わたくし、幽霊なんですが、あなたに憑いてもよろしいでしょうか?」 幽霊だって? 俺は鼻で笑った。 俺は科学者だ。幽霊なんて非科学的な事は信じない。もし目の前に立つ男が透けていて背景がぼんやりと見えていて、足が無く、宙に浮いていてもだ。 「もしかして、わたくしが幽霊だって信じてらっしゃらないんですか?」 当たり前だ。くだらんことを言いやがって。 くどいが俺は科学者だ。こんな男の存在は簡単に証明できる。 透けているのはきっとあれだ。少し前に女性の間で「シースルー」という奴が流行った。それが男の間でも流行りだしたのだろう。 宙に浮いてるのはあれだ。ドラゴンボールに憧れて、武空術を少しだけ出来るようになったのだろう。自己暗示の凄さは、世界中で例がある。 足がないのはあれだ。お気の毒な話だ。
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