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「わ、わたくしを目の前にして、幽霊の存在を信じない方は初めてです」
自称幽霊の男は不審者を見るような目で、俺を見た。
なんだこの野郎。俺から見れば、自称幽霊のお前の方がずっと不審者だ。
「ま、まあ、実際に憑依すれば信じて頂けるでしょう」
男はそういうと、物凄い速さで俺に突進してきたと思うと、ぶつかることなく通り抜けた。
そこで俺は合点した。
なるほど、コイツはサーカスの一員なのだ。あまりの過剰労働に頭がおかしくなったに違いない。毛穴を通り抜けることができるくらいの腕の良いパフォーマーなら、引っ張りダコなのだろう。実に気の毒な話だ。
男はしばらく愕然とした表情をしていたが、ふと視線を落としたかと思うと、急に納得の表情になった。
「なんだあなたも仲間なんじゃないですか」
なに?
「もう、ややこしいなぁ」
男はそういうと、ふわふわと何処かに消えてしまった。
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