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シンデレラは貧乏人
「桜井光子宛てに手紙届いてるよ」
六畳一間、真ん中に炬燵が置かれ、余計に狭く感じる和室。
見た目十歳程度の少年はやけに大人びた口調で、その炬燵に包まるぼさぼさ頭の女に言った。
「ん~、瑞樹読み上げて~」
女は整っている顔を台無しにするような特大の欠伸をかましながら言う。
瑞樹と呼ばれた少年は封筒を手で破り、淡々と読み上げた。
「先日は我が社の十周年記念パーティーに御参加頂かれましたたことを大変嬉しく存じており――」
「あー、もういいよ」
女は手を振り言葉を遮った。
瑞樹は明らかに怪訝な顔をして、手紙を最後まで黙読した後、近くのごみ箱に捨てた。
「最近仕事してないんじゃないの?――シンデレラ」
シンデレラと呼ばれた女性はまたまた大きな欠伸をして、乱れた長い髪を手で整える。
染髪ではない金色の髪、青み掛かった灰色の瞳、シンデレラの容姿は西洋人そのものだったが、口から出る日本語は日本人のものと変わらなかった。
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