月に手を伸ばす

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チクタク。チクタク。 時計の音がやけに大きく聞こえる。 ドクン。ドクン。 俺の心臓の音には敵わないけど。 「はぁ~。。先生早く来ないかなぁ~。。」 補習室は何度も来たことがあるけど、先生を待つのにこんなに緊張したことはない。 「やべぇ。。やっぱ止めようかな。。。」 時間が経つにつれて、決意が鈍ってしまいそうになる。 「いや!!今日言わないとぜってぇ後悔する!!俺は言う!!」 「なにを?」 「うわっ!?」 「そんなにビックリしなくてもいいんじゃな~い?」 「先生!!」 「で、何か相談事?」 「えっ。。えっと。。相談事つーかさ。。。何て言うかな。。。」 「何もないなら帰るけど?」 「!?待って!!すぐ言う!!」 そんな面倒くさそうな顔しないでよ。 俺にかける時間が勿体ないとか思ってるの?すぐ済むからさ。お願いだから今だけは。。俺だけを見て。。 「あんさぁ~。。。俺さ。。えっと。。俺。。。先生のことが好きなんだ!!」 ずっと抱えていた想いを、先生が受け止めてくれるはずもないけど、俺は。。海底の泡は。。。聞いてもらえただけで幸せだと思う。 「。。。それってさぁ~恋愛感情なわけ?」 「。。。うん。でもさ!!先生の答えとか求めてないんだって!!だからさ。。別に気にしないで。。」 「う~ん。。じゃあ俺と付き合う?」 「。。。はっ!?」 先生の軽蔑した目を想像して下を向いていた俺は、思いっきり顔を上げた。「だからぁ~俺と付き合う?って聞いてんだけど?」 先生が発した言葉が予想外過ぎて、俺は口を大きく開け、頷くしかできなかった。 「じゃあこれからよろしくな~渦波~」 「えっ。。あっ。。はい。。よろしくお願いします。。。。」 「ふふ。。何でそんなかしこまってんの?」 「。。だって先生がまさかokしてくれるなんて思ってなかったからさ。。」 「まぁ。俺はお前のこと嫌いじゃな~いよ」 「。。それって何か微妙じゃん。。」 「まぁいいじゃない。さっ帰るよ」 「。。えっ!?一緒に!?」 「当たり前じゃない。恋人同士なんだから。」 「恋人///」 「照れてないでほら行くよ~」 「あっ先生待って!!」 海底の泡が月に手を伸ばしても届かない。 でも 月が海底の泡に寄り添えば 少しだけ 距離が縮まることを知った。
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