楓と椿と試み峠

ねぇ、知ってる？

「これは友達から聞いた話なんだけど……。」

精谷大学の昼休み。

生徒から教授まで昼食を食べに来る学生食堂は、今日も人でごった返している。

一ヶ月後に試験を控えているせいか、蛍光ペンやブラックライトなどを使って勉学に励む学生の姿が多い。

そんな満員の食堂の一角で、季節外れの話をしている四人組がいる。

それが楓と椿、桜、柳の通称『森林四人組』だ。

楓と椿は周りから見ている人々の気を抜かすようなバカップルぶりで、お互いを『つばきゅん』『かえたん』と呼び合う程である。

クリスマスが過ぎてからというもの一層そのイチャイチャぶりに磨きがかかり、イタさがとどまるところを知らない。

一方桜と柳はクリスマスが過ぎてから交際を始め、正月明けの今はまだお互いに顔を赤くしながら付き合っている状態だ。

だが正月に二人きりで歩いているところを楓が発見したため、距離は着実に近づいているようである。

そんな４人の周りはいつも椿のけたたましい程の関西弁が響いているのだが、今日はいつもとはまるで違った雰囲気を帯びていた。