狂い始めたシナリオ

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 エンの所属する『レッドツリー』のアジトは、権力と知名度の大きさを誇示するように、町の中心にそびえ立っていた。  外壁に囲まれた建物と、厳重な警備。  天に向かって聳(そび)え立つ様子は、塔にも似ている。  要塞と異名を持つこの建物に、しかし傍目から見ても異常が起こっていた。  日が落ちているのに、外壁の照明が消えている。  車を通す為の鉄製のゲートも開放されたままだ。  誰も出てこない。  敷地内をパトロールしている、オートドール(二足歩行独立型思考ロボット)も確認できない。  何かあったのは明白だ。  電気系統もダウンか?  この様子なら、正面入り口のカードキーを使用するゲートも、本来の役目をなしてないだろう。  灯りはないが、まだ完全な闇ではない。  風に乗って鼻をつく、かすかな血の匂い。  誘うように、建物内へと続いている。  一箇所だけ、強引にこじ開けられた場所から建物に入る。  罠か。だがそれは、エンが足をとめる理由にはならなかった。  幾多ものセキュリティが配置された最新型警備システムも、電気がなければ話にならない。
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