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それは、どのセキュリティ技術よりも優れた、防御システムと防御扉に護られたシステム室の陥落を意味する。
襲撃者にとって、この辺りの警備システムの突破など、造作もなかったのだろう。
防衛システムの作動しない通路は、ただの長い廊下だった。
行き着いた先は、組織の最高責任者の謁見の間。
エンは扉を押し開けた。
広い空間には、照明がなく――否、一箇所にのみ、スポットライトさながらに、光が当てられていた。
椅子に座らされて固定されているのは、組織のボス、ラウロンだ。
「ずいぶんのんびりした帰還だな」
どこからか反響した声が聞こえる。
「急いだつもりはないさ」
「強がってはいても、内心では震えているだろう? 貴様の所属していた組織は、我らの手によって、こうも簡単に陥落させられた」
「別に」
エンはラウロンと目が合った。
、、、、、
初めて見るボスは、外見は初老の老人であり、今にも泣き出しそうな顔は、とても組織のボス――という器ではなかった。
闇に潜んではいるが、エンには黒スーツの姿が見えていた。
左に1人、右に1人、中心に1人の計3人。
ホテルの44号室で襲撃された、黒スーツの仲間だろう。
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