昨日と今日

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 エンは『ゴールドウィン』という、大層な名前の安ホテルにチェックインした。  フロントの男はエンを一瞥すると、無遠慮に値踏みを始めた。 「何泊の予定だ?」  この町で愛想など金にもならない。男は無表情だ。 「一泊だ。ところでこの宿に、フランツベルって客は泊まってないか?」  男が少し目をそらすと、今度はエンの目を見た。 「知らんよ。客の名前なんぞ記録してないからな」 「そうかい」  エンは前金を払い、部屋に向かった。  4階の4番目の部屋、44号室。    白く飾り気のないドア。カードキーを差し込むタイプのものだった。  ノックしてみたが、反応はない。    蹴り破るか破壊するかも考えたが、ドアは意外に頑丈そうだ。     無駄な労力を使うこともないだろう。自分が予約した43号室に入った。    6畳ほどの部屋に、カーテンのない窓と簡素なベッド。ご丁寧に、机の上にはテーブルクロスが敷かれていた。  一通り見て部屋を出た。  この部屋自体に用はない。  間取りを確認しておきたかった。
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