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「もっと一緒に遊びたいよ!」
「僕ももっと一緒にいたいよ!」
穏やかな春の日。
そろそろ日も暮れるという頃
「そろそろ帰るわよ~」と優しい声が何度も響いていた。
そんな言葉になど耳も貸さず、いつまでも庭で遊び回っている子どもたち。
「じゃあ……
パパとママみたいに結婚する?」
「けっこん?」
「うん。結婚して“ふうふ”になればずっと一緒にいられるんだよ?」
「ふーん……
じゃあ、結婚する!」
顔をほんのりと赤く染め、ここぞとばかりに提案する少年に、もう一人の……、
彼より少し幼く見える子は何も分からず無邪気にそれに賛成した。
――面白い事になってる。
なかなか戻ってこないのを見兼ね、迎えにきた彼は、そこで繰り広げられていたままごとのような光景を目の当たりにし、そんな事を思っていた。
そして彼は未だに頬を赤く染めている少年に苦笑いしながら近づいていった。
「残念だけど結婚は大人にならないと出来ないよ。」
「じゃあ、大人ってどうしたらなれるの?」
拗ねたように聞く少年に、彼は少し考え、
「20歳になったら大人だよ?」
……多分ね。
適当に言ったにも関わらず、それを聞いた少年は嬉しそうに言い放った。
「じゃあ、20歳になったら迎えに行くから待っててね!」
「うん、わかった。待ってるからね!絶対に約束だよ!」
こうして些細なおままごとのような約束は、にんまりと笑う彼の目の前できっちりと交わされた。
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