プロローグ

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血と硝煙の臭い。 酒の香り。 汚い、金の音。 銃声すらも、止むことを期待してはいけない。 流れる時間を見れぬ代わりにと、消える命を見る事しか。 誰が正しいのか。正義を消し、自らの正義を証明する。 混沌から裏返すような、残虐で悠長な音。 光を遮る硝煙と鮮血の血潮。 俺達は、そうして世界から切り離された。 戦いを望む者の手には、銃。 平和を説く者の手には、銃。 この世界から、血と硝煙が消えることは無い。 掌にある、鋼鉄の冷たさも、血の温かさも、消えることは無い。 消えるのは、罪の意識と、平和を望んだかつての心。 空は青い。 海もまた、青い。 森は緑で生い茂り、土からは新たな芽が出る。 この世界は、美しい。 悍ましき闇があるからこそ、人はそれを望む。 だが、酒が、金が、銃が、波となり人を闇へと引きずり込む。 覚悟も思いも粉砕し、情も夢も飲み込んでいく。 そうして銃声が止んだ後、そこに残るのは。 何も残らない。 ――その世界で俺は、薄暗がりから混沌へと踏み込んだ。 その先に待つのは血と硝煙の臭い、酒と銃声。 波が過ぎても、その臭いも、音も、消える事は無い。 信じる事が出来るのが、自分と、銃弾だけ。 寂しい世界。 混沌から抜け出そうと、銃を片手に考えてみる。 その先には何が。 そこにまた、戻ることは許されない。 光はもう遠い世界。 耳を済ませば、酒と金の音。欲望が入り交じる声。 目を凝らせば、銃と鮮血の血潮。 香るのは、 血と硝煙の臭い。
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