バットとの生活

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 バットのお陰で僕の生活は、ガラッと変わった。  それまでと違って、外に出る事がずっと多くなった。  バットが超音波で送ってくれる信号は、会話しているように良く解った。  ママのお手伝いで買物だって出来る様になった。スーパーに言って僕が 「次はキャベツね」    と言うと、ポケットの中からチョコンと顔を出しながら、バットが信号を送ってくれる。 「そこを右に曲がって真っ直ぐ。そうそう、そこで手を伸ばしてごらん」    こんな感じで教えてくれるんだ。  そして、その帰り道に河原の電柱の下に行って、ポケットを少し開けてあげるんだ。  お手伝いしてくれたご褒美ってわけ。  僕は虫が入らない様に、鼻を摘まんで立っているだけ。  僕には見えないけれど、バットは大きく開けた口に飛び込んで来た虫をきっと美味しそうに食べているんだと思う。    家の中での生活も大きく変わった。    この間、僕は生れて初めて、絵を描いた。  もちろん今までに、色鉛筆や絵の具でスケッチブックに『何か』を描いた事はある。  でも『絵』を描いたという気がしなかった。どう描けているのかが想像付かなかったんだ。 「そうそう、そこで大きくカーブをさせると象のお尻そのものだ。次はお尻の反対側に、あの長い鼻を描いてみよう」  バットはそうやって、上手に『絵』を描かせてくれた。  いつの間にか僕の部屋の壁は、二人で、いや、一人と一匹で一緒に描いた『絵』でいっぱいになった。
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