プロローグ・幼なじみと俺

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自分も続いて下車する。 向い来る沢山の人を避けながら、それでも教科書を片手に「オスマン帝国」とか呟きながらホームを歩く。 こういう悪あがきは結構大切だと思う。 改札が近づいてきたので一度、教科書を閉じて、定期を通す。 路線を乗り換えるためだ。 改札を抜けてすぐの柱にもたれかかる。 すぐ隣で立ち止まるそいつ。 いつもの定位置だったりするわけで、ごくごく自然な流れ。 「なぁ。」「ん?」とか呼んでみる。 もちろん名前を知らないということではない。 なんせ幼稚園からの幼なじみなんだから。 小学校三年生までは「みさちゃん」なんて、呼んでいたけど今はもうそうは呼ばない。 向こうは相変わらず、「たーぁ」なんて呼んでくるが。 因みにこれは、この幼なじみだけが使う呼び名で、学校のクラスメートからは「やーさん」と呼ばれている。 「なんなの?」とか訊かれてしまう。 えっ、とまぁ、呼び掛けておいて黙っていたから当然だな、とか反省。 「世界史、範囲広すぎるよな」「そうだね」「いけそうか?」「八十点くらいかなぁ。」とかそんなやりとり。 相変わらず、みさは頭が良い。 見た目はギャルなのに。 と言っても、別に茶髪でスカートが短くて上のブラウスを着くずしているわけではない。 黒髪でスカートは膝上、ブラウスもバッチリ、まさに校則通り。 まぁ少しスカートは短いかな、と訂正。 とにかく全くギャル要素なんて何一つ装備していない。が、ギャルなんだよな、顔が。 母親に似たんだろうな。きっと。 かなり端正な顔立ちにスラッとした体型、長い黒髪は今は後ろで結っている。 化粧も控えめで、だけどバッチリ決まっていて、素っぴんでも全然大丈夫なまさに美女。
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