0人が本棚に入れています
本棚に追加
自分も続いて下車する。
向い来る沢山の人を避けながら、それでも教科書を片手に「オスマン帝国」とか呟きながらホームを歩く。
こういう悪あがきは結構大切だと思う。
改札が近づいてきたので一度、教科書を閉じて、定期を通す。
路線を乗り換えるためだ。
改札を抜けてすぐの柱にもたれかかる。
すぐ隣で立ち止まるそいつ。
いつもの定位置だったりするわけで、ごくごく自然な流れ。
「なぁ。」「ん?」とか呼んでみる。
もちろん名前を知らないということではない。
なんせ幼稚園からの幼なじみなんだから。
小学校三年生までは「みさちゃん」なんて、呼んでいたけど今はもうそうは呼ばない。
向こうは相変わらず、「たーぁ」なんて呼んでくるが。
因みにこれは、この幼なじみだけが使う呼び名で、学校のクラスメートからは「やーさん」と呼ばれている。
「なんなの?」とか訊かれてしまう。
えっ、とまぁ、呼び掛けておいて黙っていたから当然だな、とか反省。
「世界史、範囲広すぎるよな」「そうだね」「いけそうか?」「八十点くらいかなぁ。」とかそんなやりとり。
相変わらず、みさは頭が良い。
見た目はギャルなのに。
と言っても、別に茶髪でスカートが短くて上のブラウスを着くずしているわけではない。
黒髪でスカートは膝上、ブラウスもバッチリ、まさに校則通り。
まぁ少しスカートは短いかな、と訂正。
とにかく全くギャル要素なんて何一つ装備していない。が、ギャルなんだよな、顔が。
母親に似たんだろうな。きっと。
かなり端正な顔立ちにスラッとした体型、長い黒髪は今は後ろで結っている。
化粧も控えめで、だけどバッチリ決まっていて、素っぴんでも全然大丈夫なまさに美女。
最初のコメントを投稿しよう!