プロローグ・幼なじみと俺

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「たーぁは?」「うーん、まぁ、欠らないくらいになら…」とか応えてみる。 内心、六十点は大丈夫だろうと思ってはいるがなんせ先に八十点とか言われてしまっているわけで。 六十点がえらく中途半端に思えた結果、赤点(四十点)以上とか言っといた。 「世界史は苦手?」とか、みさ。 「数学よりは得意」と少しズレて回答。 我ながらめんどくさい。 わざとではない。ただいつも回りくどくなったりして、後で反省する。 「数学はいつも悲惨だもんね。」とか横で言ってるけど、今はセルジューク朝の特徴を覚えるのに必死なわけで。 「今日、暇?」 うん、暇じゃねーよ、セルジューク朝の特徴を以下略、とか屁理屈。 「まぁ、部活はないな。」とエナメルカバンを見せ付けながら応えた。 と言うのは、テニス部なわけで、部活の日はいつもラケットバックだったりするわけで、はい。 「じゃあ、遊びに行かない?」と、みさ。 「うーん、めんどくさい」と、俺。 「いいじゃん」と、みさ。 「うーん、わかった」と、俺。 長い付き合いだからこそ掛け合い。 みさはしつこさが売りなのだ、と勝手思っているが、実際にしつこい。 みさの「絶対」と「どっちでもいい」時の違いは何となく判る。 今回は「絶対」だと思ったので早々と諦める。 「買い物したいの」「ふーん」「水着」「ふーん」「みたい?」「…………」 なるほど、セルジューク朝の特徴が全く頭に入らない。 「ねぇ?」「みたくない。」「あっそ。」 とか言ってみたが、みさの水着姿が既に脳内で召喚されているのは内緒、もんもん。 「赤」 パチーンと脳内召喚されたみさがはじけた。 ドキッとして、みさの顔見る。 「たーぁは赤、好きだもんね!」と自然な笑顔。ちょっとドキドキ。 そして恥ずかしい。 十年以上付き合うと、女はエスパーに目覚めるんだなと、メモメモ。 「まぁ、もう夏休みだしな」と、取り敢えず応える。 「楽しみ」「宿題」「楽勝だよ」「おまえはな」とか言葉を交わす。 「夏休みの予定とかないの?」とわざわざ頭を下げて、下から覗き込んでくる。 てか近いよ、顔が。 「部活」 「ふーん」と目を細めて言った後、なら大丈夫だね、とか言う、みさ。 何が大丈夫なのかは知らないが、今はセルジューク朝以下略なんですよ、みささん、と数秒間見つめた後、教科書に視線を戻す。
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