第一章 桜の邂逅

2/3
前へ
/4ページ
次へ
        閉ざされた襖。   入る事を許さない、とでも言うように 凛と貼り詰めた空気はひどく息苦しい。     「まだそっとしといたらええき。」     不意に聞こえた声に襖に掛けた手が止まる。 状況を把握しようと辺りを見渡した朱髪の男は、暗く静寂に包まれた廊下の奥の気配に顔をしかめた。     「…龍馬、何故お前が此処に居る。」     そう尋ねる声音は表情同様、不快な色が滲んでいる。     「湯上がりに縁側で涼もうと思っての。」   鋭い視線を気にする風もなく龍馬と呼ばれた男は答えた。  
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

53人が本棚に入れています
本棚に追加