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「あ、そうそう。今日のダジャレで通算600種類目だよ。」
トレーニングの準備を終え、玄関の外に出たとき、エミルが嬉しそうに話す。
中学に入ってから始めているこの毎朝の習慣は、エミルのノートに事細かく記されている。
最初は幼なじみにこんなことを記録されてると思うと恥ずかしかったけど、今はもう慣れたもんだ。
だいたい俺のダジャレなんかノートに書き記して何が楽しいのかわかんねえけど、エミルはそれが楽しいらしい。
毎朝必ず俺よりも早く起きて、俺がダジャレを言うのを待ってる。
学校がある日は俺を起こしに来てその場で、休日は俺がいつ起きるかわからねえのに俺が起きるまで隣の自分の部屋で、スタンバってるんだよな。
当然これまで3年間、聞き逃しはない。
これですごいのは、修学旅行の日ですら、俺が言ったダジャレを聞き逃してないってところだ。
俺と同室にいたやつから聞き出していたのだ。
まあ、修学旅行の日ですら朝からダジャレかます俺もどうかと思うけど、それすらも記録するエミル。
そこまでされるとさすがに…………
さすがに…………
……………………
チラッ。
横にいるエミルを見る。
なんかダジャレノートを見てニコニコしてる。
なんかとてつもなく幼なじみが怖くなってきた。
ちなみに最近ではダジャレのキレで俺の体調がわかるらしい。
どんなスキルだよ。
「よーし、まずは球場までランニングだ!……チャリの準備はいいな?」
「いつでもオッケーだよ。」
俺のランニングに合わせてエミルが自転車で付いてくる。
これが俺たちのスタイルだ。
最初、『私も走った方がいいかな……』とエミルは言っていたんだけど、球場までは結構距離がある。いくらエミルが中学の時にテニス部に所属してたと言っても、体力が持たないだろう。それに俺と走るスピードも違うから、あんまり遅いと俺の練習にもならないしな。
「よーし、じゃあ出発!」
「ファイト、カイト!」
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