第1話 奇妙な光景

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「なあエミル。」 「え?」 「こっち来てみろよ。」 エミルをマウンドに呼ぶ。 「何かあったの?」 「ここ。」 俺がマウンドを指し示す。 「パソコンだ……。」 そうだろう。おかしいよな?こんなところに……。 「この白いノートパソコン、こんなところに置いて汚れたりしないのかな?」 ……………………。 いや、俺が不思議に思ってほしいのはそこじゃなくてだな………。 なんか時々こうしてエミルとの間にズレを感じる。エミルがおかしいのか、それとも、俺がおかしいのか……。 とりあえず俺は自分の疑問をエミルにぶつけることにした。 「なんでこんなところにパソコンがあるんだ?」 「え?」 「しかも、このパソコンにはマウスがない。」 「…………………。」 不気味だろ?と言おうとすると、エミルはにっこりほほえんで俺に説明を始めた。 「あのね、カイト。最近のパソコンってすごいんだよ。私もこの前知ったんだけど、最近のパソコンってマウスなくても動かせるのよ。キーボードの手前のところに指をおいて滑らせると………マウスみたいに動くの!この前わたしすっごく感心しちゃって………、お店で2時間くらいお母さんと夢中になって遊んじゃった。」 「へ~。」 そうなのか。そんな便利な時代になったんだな。 まあ、俺は今初めてその事実を知ったわけだが、さすがに2時間も遊ぼうとは思わない。こいつ、よっぽど感心したのか。 「というわけで、別にマウスがなくても不思議じゃないよ。」 「そうみたいだな。」 つまりはまあ、俺がどうかしてたってことだな。 最近はマウスのいらないパソコンが発売されてて、マウスがないのは何ら不思議なことではない、と。 うむ、一件落着。 これですべての謎は解決した。
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