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「あなたに仕えよう、命を賭して」
13歳だった俺は継鹿尾の山に守られ、恐ろしいほど世間に無知で、傲慢だった。
「我が名は前鬼」
「我が名は後鬼」
二つの声が唱和する。
「我等は役小角に捕縛され、子々孫々にわたってその血筋に仕えると誓いをたてためおとの鬼。
そなたは役氏の血を引くもの。
我等の守護はそなたのために働く」
俺のつまらない人生にとって大事なことはひとつだけ。
夜ごと体にぴったりとした漆黒の衣装に身を包み、マントをばっさばさ風になびかせながら近所の寺の門の前まで自転車でかけていく。
そして、役小角に仕えたという伝説の鬼夫婦と秘密の会話をすることだけだった。
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