はじまりの子

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産み落とされたちいさな命は、大きな産声をあげた。 兵士たちは初めて見る命の誕生に歓声を、侍女たちは涙を流して喜んだ。 待望の第一子の誕生。 国中が歓喜に湧いた。 赤子が名を授かるのはそんな夜。 「ふふ、元気な子だ。義、ご苦労であったな。疲れただろう?もう休め」 「いえ…御心配には及びませぬ。 輝宗様こそ、もう夜も更けてきました故、お疲れでしょうから、」 義と呼ばれた黒髪の美しい女は口元を綻ばせ笑う。とても幸せそうな微笑みだった。 対して、輝宗と呼ばれた男は困ったように肩を竦ませる。 「情けないが…私は此処で祈っていただけさ。男というのは肝心なところで役にたたない」 「まあ、そのような。…とても心強う御座いました。 ところで、名は如何なさいますか?」 義姫が傍らで眠る赤子を撫でながら輝宗に問いかけると、よくぞ聞いた、という表情を浮かべて、懐から一枚の紙を取り出して広げてみせた。 それに大きく書かれている一文字。 「籐…に御座いますか?」 「ああ、これからこの子は籐姫だ」 「籐姫…きっと美しい子になりましょう」 いったいこの子はどんな娘に育つのか。 くすくすと笑いあう2人。 とても穏やかで、温かな時間だった。 .
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