クライアント

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もう逢えないと思ってたから、少し浮かれた。 「お久しぶりです」 そうかしこまった部長が、私なんて眼中になさそうに、仕事の話を交えて会話を進めていく 美味しいはずの料理は喉を通らなくて ずっと、部長のしぐさに気をとられる よくみれば整った顔と よくみれば筋肉質な身体 ときおり見せる、はにかんだ笑顔が 全部 胸に突き刺さる イテテテ。 チクチクする胸の傷みが、一定のリズムを刻んで私を攻撃する あ――マズいかも。 息するのも、苦しくなってきた。 「そろそろ」 そう声がして、時計を見たら、もう終電間近。 ああ、もう。 もう。逢えないかもしれない。 「何かあれば、いつでも電話して来てください」 そう言ってくれた言葉に、一瞬舞い上がる。 「あっ、はいっ」 でもこれ、きっと社交辞令だし、お仕事の電話だし。
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