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「はぁ……」
一人になりたかった。
人にも雰囲気にも流されないで、本当の自分を見つけたかった。
でも、そんなの無理だ。
今の世の中じゃ、誰にも影響を受けない人なんかいるわけがない。
自分の意志を貫くなんて、よほどのバカじゃないとできない。
そんな諦めに近い感情と悟の誘惑に肩を押され、波流はすでに万引きや援助交際など、世間の言う『悪事』に手を染めてしまっていた。
「どないしたんや、そんなとこで。危ないから早よ降りてこい」
固く硬直していた波流の体を、柔らかい関西弁が包み込んだ。
振り向くと、黒い浴衣を着た中年のおっちゃんがボーッと立っている。
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