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「な、なんでもねーよ」
波流は、わざと声を荒げる。
だが、自分が立っている場所を見て波流はギョッとした。
いつの間にか沿道から土手を登り、降り続いていた雨で濁流と化している川を急角度で見下ろしていたのだ。
地面はまだ少しぬかるんでいて、足を滑らせたらあの流れに飛び込むことになる。
いくら悩んでいたとはいえ、波流はそこまで思い詰めてはいなかった。
波流がきまり悪い表情で沿道に駆け下りてくると、おっちゃんは笑いながら言った。
「ちょうどええ、あんた今暇か?」
波流はジッとおっちゃんを見つめた。
オジサンを相手にするのは波流にも経験があったが、
目の前のおっちゃんにはそんな欲望剥き出しの変態達なんかとは全く違う、何かを感じた。
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