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「暇だけど」
「そんなら、手貸してくれへん?人手が足りんのや」
「手貸すって……何を?」
「出店や」
おっちゃんはニッと笑って言った。
「焼きそばの出店や。今日と明日、そこの市民グラウンドで夏祭りがあるやろ?」
知らなかった。
「そこへ店出すねん。店建てんのに時間かかんのや。頼む!」
少してっぺんがハゲ気味のおっちゃんが手を合わせて頭を下げているのを見下ろして、波流は笑いをこらえながら答えた。
「いいよ、散歩してただけだし」
「よしきた!こっちや!」
波流は自分で言ってから、制服を着て鞄も持たずに散歩というのは明らかにおかしいのではと思ったが、
おっちゃんは気にもせず、まるでいたずらが成功した悪ガキのように、嬉しそうに波流の手を引きグラウンドへと連れて行った。
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