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雨と土の匂いが混ざった、懐かしい香りのするグラウンドでは、すでに夏祭りの準備が着々と進められていた。
中央に櫓が組まれ、そこから提灯が放射状に広がっている。
浴衣を着たカップルや、盆踊りのリハーサルをする子供達などがまだ日が出ているにも関わらず、続々と集まってきていた。
波流を連れたおっちゃんは、人混みを縫うようにして、
『焼きそば』と大きく書かれた幕と大小様々な鉄骨を組み合わせて、出店の形に近づけようと奮闘している女の子の方へ歩いていった。
「ハル、何しとんねん」
女の子が顔を上げた。
透き通るように綺麗な水色の浴衣に包まれた体は小柄なのにも関わらず、顔は端正で美しい。
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