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それは、とても静かな夜だった。
風はなく、虫の鳴き声も聞こえてこない。
静まりかえったそんな中、一人木に寄り掛かり夜空を見上げている。
すると、急に ポツポツと 雨が降り始めた。
だが、彼は家に帰ろうとはしない。
ずっとそのまま夜空を仰ぎ続けている。
そうしていると、近くの家から女の人が出て来た。
「雨が降ってきたから中に入りなさい。」
と彼に向かって言った。
「そんな薄着でいたら風邪引いちゃうわよ」そう言われて彼は、その人の家に入っていった。
その家は、山を切り開いてできた村の少しはなれた所にある。
その村には、神社と寺が一つづつある。そこには、雨の神が奉られている。
この国には、晴れをもたらす太陽の神と、雨や雪をもたらす雨の神がいると信じられている。そして、30年に一度、その神の巫女が産まれる。
その巫女達は、別々に離れ、旅をし、渇いた土地には雨を、あまり日の当たらない所には晴れ、太陽の光をもたらす。
今年は、その巫女が新しく産まれる年。
そう、今降っている雨は雨の巫女の誕生を知らせる雨。
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