努力は必ず報われると信じたい②

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  カツーン、カツーン。  どれだけの時間をこの作業に捧げたことだろう。中間地点はしばらく前に過ぎたが、頂上には一向に辿り着かない。  今後、この作業をどれほど続ければいいのだろうか。すでに気力は尽きていた。   カツーン、カツーン。   打ち終わった杭に腕を伸ばす。少し緩いようだが、強引に力を込めた。打ち直すのは面倒だった。  すると、杭が抜けた。手掛かりがなくなった身体は後ろに流れていった。  しまった、まずい、その単語ばかりが頭の中を駆け巡った。必死に手を伸ばしてもがく。しかし、虚しく空を掴むばかりで、その手に触れるものはなかった。  次に臓物が浮くような感覚に襲われた。体中の筋肉が強張り、足掻くこともできない。  何もかもを諦め、瞼を固く閉じた。この瞬間がすぐに終わってほしいと願った。死の瞬間が来るならいっそ一思いに来てほしかった。  衝撃は思っていたよりもずっと早く訪れた。強い圧力が背中を締め付け、うめき声を上げた。衝撃はそれだけだった。  恐る恐る目を開けると、張り詰めた縄が軋んでいるのが見えた。宙に吊られていることを理解し、無我夢中で縄を伝い、杭にしがみつくいた。  生への喜びよりも死への恐怖の方が勝っていた。死を覚悟した経験は一度や二度ではないが、かつてこれほど強く死を連想したことはなかった。体の芯から震えていた。滑稽なほど大量の汗が吹き出していた。  己が相対している存在の強大さと、死と隣り合わせという現実を思い知らされた。  登る気力がまるで起きない。見上げることすら恐ろしい。壁がまだ続いているという現実から目を背けたかった。登ることであの恐怖が繰り返されるのではないかと思うと再び身体が震えた。  大地が恋しい。こんな不安定な場所にはいたくない。   足下を見ると杭が刺さっていた。その杭は大地まで届いている杭だ。迷うことはなかった。一段一段下りていった。
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