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しばらくすると、風が走り抜けました。
黒雲は風が大の苦手ですから、蜘蛛の子を散らすようにいなくなりました。
風は少し冷たい息を吐きながら言いました。
「さぁさぁ、太陽がお待ちかねだよ。もっと急いだ方がいいんじゃないのかい」
彼はここで初めて、自分が太陽のもとへ向かっていることを知りました。
風は続けます。
「そういえば、雲の上から落ちたそうじゃないか。大丈夫だったのかい」
風の息は、彼の髪を少し揺らしました。
彼は答えました。
「えぇ、怪我はないようです」
そして彼はここで初めて、自分が雲の上から落ちたことを知りました。
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