コノ葉

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家が見えた。 こんな時間に帰るのは初めてだったのでバツも悪く、それを誤魔化そうとコンビニで買った菓子やら何やらを握り締めて、鍵を開けた。 「おかえり、お兄ちゃん。ずいぶん遅かったのね」 母はむずがる弟を抱っこして、家中を歩き回っていた。 「……にーたっ!おにいーたっ!かえってきた!」 「わっ、どうした?」 弟は母の胸から飛び出して、僕の元へと駆け寄ってくる。玄関でまだ靴も脱いでいない僕の足にしがみついて、泣きわめく。 うろたえてどうしたら良いのか分からない僕に、母は言った。 「ごめんね。その子、お兄ちゃんが帰ってこないってずっと寂しがってて……。できれば抱っこしてあげてくれると、嬉しいんだけど……」 命日からここまでなるべく顔を合わせないようにしてたものだから、母は少しこちらを窺うような素振りだった。だけど、久しぶりに間近で見た母の顔はどこからどう見ても『お母さん』で、優しかった。 そして僕にしがみつく弟を仕方なさそうに一瞥すると、今度はリビングのドアの裏で縮こまっている妹を抱き上げる。 妹も恥ずかしそうに、母の胸元を握っている。 「ほら、この子も寂しがって、さっきまで泣いてたのよ」 抱っこなんてあいつも久しぶりだろうな、今は別の意味で泣きたいんじゃないのかな、と僕は何だか微笑ましさを感じてしまった。 僕は弟を抱き上げ、靴を脱ぎ、リビングへ向かう。 買ってきた袋を開くと、弟妹たちは現金にもすぐに泣き止んでコンビニスイーツに夢中になった。
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