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『―――おっさんでもいいなら助けてやる』
その通信と共に機体が、自機と敵機の間に割り込んだ。その機体にブレードが振り下ろされるが、当然、NSに阻まれる。ブレードが当たっている部分のNSが薄く青色になり、色がだんだん濃くなっていき、砕けてしまった。が、そこまでだった。機体本体にはブレードは届かず、ブレードそのものが砕けてしまった。
「―――ブレードが砕けただと!?」
NSとブレードが互いに相殺したのだ。普通のNSだとまず、こんな事はあり得ない。EN兵器は高出力高火力が売りだ。それをシグナル・フレームが軽減するどころか相殺するなど、傭兵は見たことが無かった。幸いにブレードはEN兵器で実体剣ではないため再構築出来るが、動揺は大きかった。
傭兵はその機体をディスプレイに映した。いったいどんなシグナル・フレームなのだろうかと。
先ほど砕けたNSの傷は修復され、元の不可視な透明色に戻っていた。頭、手、足があり人型である。シグナル・フレームの構成としてはどこもおかしなところは無い。
しかしその機体はシグナル・フレームとしては異常だった。
上から下まで分厚い装甲に包まれているのだ。
今のシグナル・フレームは軽量化・高速化の一途をたどっている。基本装甲が薄くても、第2装甲とも呼ばれるNSがあるので実質、機体防御力は変わらないのだ。更に、エネルギー容量を大きくすればそれだけNSの出力が増し、防御力が上がる。
それが目の前の機体はどうだ。見るからに主流の正反対を行っている。
見るからに硬そうな装甲と、先ほど見た格闘用EN兵器を相殺するほどのNS出力。そして手には見るからに高火力のガトリングガンを持っている。機体が一回り大きいため、要塞を相手にしているような感覚すら覚える。
今の装備は先ほど砕かれたENブレードと同じ物が両腕に2本。腰にマウントしてあるアサルトライフルが一丁。傭兵の戦い方は第3世代が売りの機動力で相手に近づき、ブレードで一撃、状況に応じて射撃といった典型的な一撃離脱型の戦い方だ。しかし、自慢のブレードが砕かれたばかりだ。1機だけを相手にこの装備で頼りないと感じたのは初めてだ。
しかし自分は傭兵だ。依頼をこなさなければならない。
「こちらは傭兵だ。訳あってその機体を捕獲しなければならない。―――そこを退いてくれないか」
さあ、どう来る
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