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人は地上を捨て空へ逃げた。
逃げるしかなかった。
どうしようもない事が起きたから。
―――じゃあ次は?
もしこの青い空の中でどうしようもないことが起こったら?
どれを切り捨てればいい?
何を諦めればいい?
どこへ逃げればいい?
― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―
少女は逃げていた。
周りを鉄の板で囲まれ、シートは一つ。独特のインターフェースと計器類が表示されているディスプレイ。コクピットと呼ばれる場所に少女はいる。
ディスプレイから漏れる光が長髪の彼女を照らす。童顔の彼女の顔には焦りと呼ばれる表情が出ていた。
ディスプレイから外の景色が見える。周りは一面の青。下を見れば白い雲が地上を覆っている。
『――まだ逃げる気かい?』
1対1(ワンオンワン)通信から聞こえる声がコクピット内に響く。少女は声を無視し、機体をさらに加速させる。
『どうせ逃げる場所なんて決まってないだろう?』
少女はつい数時間前まで住んでいた空中都市を身一つで飛び出してきた。衣類はおろか、財布も置いてきてしまった。計画性なんて全く無く、行き先は未定。
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