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『君の方の通信が全通信(オープンチャンネル)になってるよ。行動力はあるのに以外とドジなんだね』
「!?」
慌ててディスプレイを見た。本当に1対1じゃなくて、全通信になっていた。言われて初めて気がついた。
全通信は周の全ての受信機に送信する設定だ。つまり、もし他の誰かが近くを通っていれば今までの会話は丸聞こえだったという訳だ。
「い、いいでしょ!他に誰も居ないんだからっ!!」
基本的なミスを指摘されて恥ずかしかったので、そのまま全通信で会話することにした。ただの強がりだ。
『おや?直さないのかい。強がるなんて可愛いじゃないか』
「くぅ……」
少女の顔はディスプレイの光に負けないくらいに羞恥で真っ赤に染まっていた。
『くすくす………それはそうとこっちも仕事なんだ。『コクッピトを傷付けず機体の捕獲』ってね』
「やっぱり『パイロットを…』じゃないのね…」
少女は悔しそうに唇を噛む。
『…ともかく君は通告を無視した。これより戦闘行動に入らせてもらう』
今まで聞こえていた声の質が変わるのが分かった。同時に鋭く、そして重い、強烈なプレッシャーを感じる。
実は今までずっと敵の姿を確認できていない。都市を脱出する時にセンサー類を壊してしまったためである。主張するかのようにレーダーや周辺マップにnodataの文字が出ている。
幸いに機体の頭は壊れていないので有視界戦闘自体は問題ないが、敵がどこからくるのか全く分からない。
それ以前に機体がぼろぼろなのでまともに応戦できるかも怪しいものだ。
―――でもまだ諦めない!
まともに動けない相手を射撃でじりじり削るより、格闘攻撃で一気に削ぎ落とした方が効率がいい。それにこの機体のNS(ナノマシナリー・シールド)はまだ正常に動く為、射撃だと余計に時間がかかる。敵もそれは分かっているだろうから、必ず格闘戦を挑んでくる。
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