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打ち終わった杭を握り、上体を持ち上げた。どれだけの時間を費やしたことだろう。その先に終着点はあった。遂に頂上に辿り着いたのである。頂上では朝陽が登っていた。
久々に揺るぎないしっかりした大地を踏みしめた。深く安堵のため息をついた。
心に余裕ができたので、うつ伏せになり、たった今まで登ってきたところを見下ろしてみた。地面から頂上まで定間隔に杭が並んでいる。そこにあるのは、たゆまぬ努力の成果だった。中間で得た達成感とは比較にできないほどの想いが胸に溢れていた。
小躍りしたい気持ちを抑え、上体を上げてその場に腰掛けた。遥か彼方まで見渡せる。その景色は自分が歩んできた道だった。
その道は平坦なものばかりではなかった。高い山があり、深い谷があり、幾度音を上げそうになったことだろうか。だが、どんなときも諦めることなく乗り越えてきたのである。
頂上から見る山や谷のなんと美しいことか。山肌には朝日を浴びた木々が青々と繁り、溢れる生命力が満ちていた。谷は飛沫が陽に反射してキラキラと輝いている。まるで己が今ここにこうして登頂したことを、否、己の歩んできた人生を祝福しているかのように見えた。
感激に涙が溢れた。歩んできた道が無駄ではなかったと思えた。
しばらく余韻に浸り、立ち上がった。
前を見ると朝陽が燦々と輝いていた。あまりの眩しさに、この先の道が見えない。
しかし、これでいいのかも知れない。この先どんな険しい道が待ち受けようと乗り越える自信があった。
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