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春の足音が聞こえ始めた頃、私は巨大なリュックを背負って駅の改札を通りすぎたところだった。
平日の昼過ぎだからか、人は少ない。
すれ違う人はみな私のことをジロジロと見てくる。
小さな私の大きな旅立ちを嘲笑っているようで、不愉快だった。
――どこに行こうか?
行く宛てがない。けど、あそこにはもう居たくない。
あそこ以外ならどこでもいい。
私はどこに向かうとも知れぬ電車に、ただ着の身着のまま駆け込んだ。
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