千葉国―01

1/32
前へ
/75ページ
次へ

千葉国―01

今でも鮮明に頭に焼き付いている記憶はいくつかある。忘れられないから覚えている物と、忘れるわけにはいかないから覚えている物と。 その中でもひときわ大切で、やわらかい思い出。 暖かい日だまりの中で笑う、小さくて可愛い女の子。ふわふわした髪を風に遊ばせて、優しい声で言葉を紡ぐ。差し出された小さな手を握ると、嬉しそうに微笑んで、そっと握り返してくれた。 どちらが先に手を伸ばしたか、そんなことは覚えていない。だけど、確かに、俺は手をつないでいて、そしてそれが永遠に離れないものだと信じていた。
/75ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加