千葉国―01

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―――嫌な夢。 汗で額に貼りついた前髪を掻き上げながら、少女は霞んだ視界の中でそう思った。 冷や汗でびっしょりの身体を起こして、両の目をこする。 ―――嫌な夢。 鮮明さを取り戻した世界は、何時もと変わらない自室。何のことはない、彼女の部屋。 少女――翡翠(ヒスイ)はどこか安堵した様に息をつき、立ち上がって明かりのスイッチに手を伸ばした。 その指が、壁の小さな突起に触れる。
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