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カチッ
そんな音と同時に部屋が光に包まれる。
ベッドと机、サイドテーブルと洋服ダンスという簡素な、しかし確かな生活感を持った部屋。
――…久しぶりに見ちゃった。
サイドテーブルに鎮座する小さな写真立てを大事そうに持ち上げ、両の手で包む。そこに映るのは6人の少年少女。どこかの施設の前で、嬉しそうに、恥ずかしそうに、不器用に。笑っている一枚の写真。
懐かしく悲しい絆の証。
―――だけど。
写真立てをそっと元の場所に戻し、ハンガーに掛かっていた服に袖を通した。汗は既に引いている。
部屋のスイッチに触れればそこは再び暗闇に包まれる。
扉を開くと、四角く切り取られた光の中で、翡翠の影が長く伸びた。
ふわりと、裾の長いタートルネックが、薄い生地のスカートが、翻る。
「行ってきます」
―――だけど、忘れちゃいけない。
パタン
暗闇に落ちた部屋の中、静かな音の余韻が消えても、写真は何も応えない。
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