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ヒョコッと姿を現したのは、3歳の女の子。愛だった。
『あいっ!!せーりゅーおなか減っちゃったよ~。パパっ降ろしてっ』
「こらっ。誠龍暴れるなっ!!落ちるだろ、分かったから。」
良春は誠龍を落とさないように降ろした。
すると、誠龍は愛に駆け寄り良春を更に急かした。
『パパ早くぅ!!せーりゅーがパパのご飯も食べちゃうよっ!!』
「パパ、はぁやぁくぅ!!」
「なんだぁ??2人してっ。そんなに急いでほしいのか??じゃあ競争だ!!」
良春は2人に突っ込んだかと思えば愛を抱き上げ走り出した。
『パパ~。ずるいよっ!!待ってっ!!』
と言っても誠龍の足で追い付くはずもなく、途中からは諦め歩いて家に向かった。
道場と家は隣なので、大した距離ではないが、道場をでると良春と愛の姿はなく、誠龍の気分を下げるには十分だった。
トボトボと家の戸を開けると薫<カオル>が優しく微笑んでいた。
『ママっ!!せーりゅーね。待ってって言ったのに…パパね??…グスッ…待ってって…ック…』
「よーしーはーるーっ!!
ちょっと来てっ!!誠龍も泣かないの。男でしょ??」
よしよしっとテンポよく背中を叩いて薫が誠龍を慰めていると、良春が愛と手を繋いで玄関に来た。
「良春っ。誠龍泣かしてどうするの。競争はいいけど貴方は手加減を知りなさい。」
「わ、悪かったよ。」
と頭をかきながら謝る。
だか、薫は1つ息をついて指摘した。
「私に謝ってどうするのよ。まったくもー…。」
その間に愛が
「にぃに??大丈夫??いたいの??とんでけ、する??」
と誠龍を心配していた。
『愛、ごめんね??せーりゅー大丈夫だよ。』
誠龍が笑って見せ見せると、愛も安心したような顔をした。
妻は怒り、夫は謝る。
妹が慰め、兄は泣く。
…なんとも可笑しな構図だが、その中に、確かに家族の絆、いや、愛が存在していた。
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