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そう言うと佐野老人は鞄から水筒を取り出し、何やら美味しそうな匂い漂う液体を注いでくれた。
『ジンジャーティーだよ。』
…思い出した。
子供の頃風邪気味の時は佐野さんによく作ってもらったんだ。
寒さも手伝ってか俺はそれを三杯も胃袋に流し込んだ。
「いつ飲んでも佐野さんのジンジャーティーは美味しいですね…でも、昔とは違った甘味があるような…」
『い、いや、いつも作っていたとおりだが…まあ人の記憶なんて曖昧なものさ。』
寒さのせいか、寄る年波のせいか、佐野さんは手を震わせながら水筒をしまった。
『おっと、もうこんな時間か、私は町内の寄り合いがあるので失礼するよ。』
そう言うと佐野老人はヒラヒラと手を振り足早に去って行った。
唐突な別れにしばし呆然とした俺は、それでも気を取り直し改札口へと歩み始めた。
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