第一章

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春が近づき、日差しが暖かく、風が冷たくもある3月 神奈川県のはずれの田舎にある、とあるグラウンドでは小学生による少年団の野球の大会が行われていた 試合はすでに決勝戦であり、6年生の最後の大会だ 5回の一点差 しかし、アンアウト、ランナー2、3塁の逆転のチャンスだった すでにこの状況に守備側のチームの監督も動いており、審判に駆け寄っていた 監督が戻ると一人の小柄な選手がゆっくりとマウンドに走っていった 体格の大きな6年生のピッチャーに変わって、その小柄な選手がボールを受けとる 交代された上級生は素直に下級生にマウンドを譲ることになったが、エールを送った 「そんな緊張すんなよ おまえなら抑えられるから!!」 そういって、交代されたピッチャーは笑顔で言った 「う、うん……」 それに対して交代された小柄なピッチャーは小さく声を出してうなずく そのあとすぐに、キャッチャーが話しかけた 「いいか、今日も 俺のリードにしたがって投げていれば、抑えられるからな しっかり投げてくれよ」 「は、はい」 「あと、ちゃんとマウンドに足慣らしとけよ 今日は土が乾いてて、大分荒れてるから」 「は、はい …わかりました」小学生なのに上下関係がしっかりしているのは、この小柄なピッチャーがかなり内気な性格であるからだろう
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