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「…美味しいね」
僕たちはお土産のクッキーを食べる。
甘味があって、なんだかしっとりとしていて柔らかい。
それに味も色々あって食べてても飽きないや。
「ホント。また買ってきてよね♪」
「まあ…お母さんが旅行で買ってきたやつだし……。また行く機会があればね」
行く機会も何もこのクッキーなら近くの大きな駅のお土産コーナーで見た事あるんだけどね…。
でもお土産には変わりないし、本人も気にいってるみたいだからいいよね?
「何言ってんの? 次来る時買ってきなさいよ」
「え!? 無理だよー」
でた。クリスタルお得意の無茶。
クリスタルはこういう無茶を言って困らせるのが大好きだ。
とは言っても本気では言ってないのは知ってるんだけどね。あくまで冗談だよ。
「ちぇっ…。まあいいけど…」
頬を膨らましながらそっぽを向く。
酷いよなぁ…。僕、何にも悪い事してないのに。まるで僕が悪いみたいじゃん。
……このくだりはもう馴れてるけどね。
ジーッとお土産の箱を見るクリスタル。何かあるのかな?
クリスタルはお土産の箱、僕はクリスタルを見て不思議なトライアングルができる。
すると突然何か思いついたように顔をあげる。
「そう、病気が治って退院したらお祝いに旅行行きましょうよ♪ あたし、頑張るからさ? ね?」
その言葉…。口にしないで欲しかった。
今までほのぼのとしていた僕の心に激痛と悲しみが走った。
「……え……」
僕は返事ができない。
できるわけないよ…。もう少し夢を見ていたかった。
でもこれが現実なんだ…。だってクリスタルは……。
「ねえ、聞いてんの? 旅行!!」
クリスタルの大声で我に帰った。
「え…? そうだね。行こうね。絶対行こうね!」
「やったぁ♪ あたし、がんばるー♪」
約束しちゃった…。きっとこの約束は叶わないよ。
だってクリスタルの病気は、絶対に治らないんだから……。
もうとっくにクリスタルの余命は過ぎてるんだから……。
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