1章 1話

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「…美味しいね」 僕たちはお土産のクッキーを食べる。 甘味があって、なんだかしっとりとしていて柔らかい。 それに味も色々あって食べてても飽きないや。 「ホント。また買ってきてよね♪」 「まあ…お母さんが旅行で買ってきたやつだし……。また行く機会があればね」 行く機会も何もこのクッキーなら近くの大きな駅のお土産コーナーで見た事あるんだけどね…。 でもお土産には変わりないし、本人も気にいってるみたいだからいいよね? 「何言ってんの? 次来る時買ってきなさいよ」 「え!? 無理だよー」 でた。クリスタルお得意の無茶。 クリスタルはこういう無茶を言って困らせるのが大好きだ。 とは言っても本気では言ってないのは知ってるんだけどね。あくまで冗談だよ。 「ちぇっ…。まあいいけど…」 頬を膨らましながらそっぽを向く。 酷いよなぁ…。僕、何にも悪い事してないのに。まるで僕が悪いみたいじゃん。 ……このくだりはもう馴れてるけどね。 ジーッとお土産の箱を見るクリスタル。何かあるのかな? クリスタルはお土産の箱、僕はクリスタルを見て不思議なトライアングルができる。 すると突然何か思いついたように顔をあげる。 「そう、病気が治って退院したらお祝いに旅行行きましょうよ♪ あたし、頑張るからさ? ね?」 その言葉…。口にしないで欲しかった。 今までほのぼのとしていた僕の心に激痛と悲しみが走った。 「……え……」 僕は返事ができない。 できるわけないよ…。もう少し夢を見ていたかった。 でもこれが現実なんだ…。だってクリスタルは……。 「ねえ、聞いてんの? 旅行!!」 クリスタルの大声で我に帰った。 「え…? そうだね。行こうね。絶対行こうね!」 「やったぁ♪ あたし、がんばるー♪」 約束しちゃった…。きっとこの約束は叶わないよ。 だってクリスタルの病気は、絶対に治らないんだから……。 もうとっくにクリスタルの余命は過ぎてるんだから……。
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