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ボルト先生は悲しみにうちひしがれながら立ち上がった。
「では、これで失礼します。」
隅で、アブラクサスが猫に変身し、ウィックを楽しませているのが目に入った。
ウィックも目を細めて笑っていた。
ボルト先生は、この上ない憐れみの念がどっと溢れてくるのに気付いた。
何も知らずに、ただ猫とじゃれて笑っている、この赤ん坊に対して。
成長するにつれて本当の事を知り、涙を流し、悲しむだろう。恐らく、自分達の何十倍も深い悲しみを。
ボルト先生は、涙が滲んでくるのを感じ、サッと後ろを向いて扉に向かった。
「悲しみは、人間を成長させる。」
背後で、グリーンブラッドの声がした。
その声がやや震えているのに気付き、ボルト先生は驚いて振り向いた。
グリーンブラッドは涙を一筋流していた。
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