プロローグ

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「あ…なた…は、…誰?」 やっとの事で出た声は、細く、嗄れていた。 マントの男は答える事なく、スルスルと近寄ってきた。 アリスは逃げようとしたが、地に足が張り付き、動けなかった。 ――その瞬間、玄関扉が勢いよく開いた! 「待て、こっちだ!!」 ピーターはそう叫ぶと、何やらブツブツ唱え始めた。 すると、ピーターの右手の人差し指に嵌まった指輪から赤い閃光がほとばしり、マントの男目掛けて勢いよく飛んでいった。 マントの男も呪文を唱え、指輪から黒い閃光が走り、ピーターの赤い閃光とぶつかった。 (これは…闇の……!!!!) 危険を察知したピーターは、アリスに向かって叫んだ。 「アリス!!ウィックを連れて早く逃げろ!!」 「でも、あなたが…」 「早く!!!!」 アリスは頷き、二階へと走った。 そしてウィックを抱え、裏口から出ようとしたその時、一階からピーターの叫び声が聞こえてきた。 アリスはその時、愛する夫は死んだと、はっきり悟った。 アリスは瞬時ためらい、ウィックをそこに置いた。 「優しい、いい子に育ってね…。」 そう言ってアリスは呪文を唱え始めた。 そのアリスの目から涙が滴り、頬を滑ってウィックの額に落ちた。
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