3人が本棚に入れています
本棚に追加
彼女が気がついたのは、真っ黒になった木の幹の中だった。
一面は真っ黒。木々の緑は、跡形もなく消え失せ、空の青さだけが嫌に映えた。
あれ?いない…
なぜ、私だけいるの?
「ねぇ、どこにいるの?」
いつも一緒だった
寝るのも起きるのも
出るのも帰るのも
あのときも一緒だった
一緒のはずだった
覚えているのは
太陽が雲に覆われ、影に包まれたあのとき…
みんなが早く帰った方がいいと言っていた。あのときは、何も考えてなかった。
言われてすぐに、変な匂いが漂ってきた。
『早く逃げて!!』
森と風が叫ぶ。振り向くと、真っ赤に燃え上がる炎がすぐそばまで迫っていた。
見たことのない巨大な火に、2人は立ちすくんでしまった。
それを見た風は
『早く!!私の言う通りに走って』
2人を押して、火のないところへと連れていく。しかし、炎はどんどん増し、風ではどうすることも出来ず、彼女たちを守るので精一杯だった。
森の木々が、あちこちでうめき叫んでいる。熱い、痛いと苦しんでいる間を、2人は顔を歪めながら、走り続けた。
火は、すでに辺りを覆い、彼女たちは行き場を失った。
そのとき、炎に焼かれた木が、彼女たちをめがけ、倒れてきた。
焼かれる中、力を振り絞り木々が叫ぶ。
『木の穴の中に入って!!』
彼女たちも、最後の力を振り絞り、穴へ走った。
最初のコメントを投稿しよう!