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そうだ。あのときまで一緒だったんだ。
でも、穴にいたのは私のだけ。
すると、
穴がある木が、微かに小さな声で、語りかけてきた。
『よかった。無事で』
この木も、もう長くは生きられない。でも、少女を心配して、無事なことに安堵する。
「ありがとう」
少女も自分を守ってくれたことを知り、木を労りながらさする。
でも、気になるのは彼女のこと。
「ねぇ、知らない?」
不安をおし殺し、恐る恐る聞いてみる。
木は、黙ってしまった。そして、少ししてゆっくり話す。
『彼女はいるよ。私と一緒にいる。泣いている、そして笑っている』
「ほんとに!?でもなんで泣いてるの?」
姿がないことに疑問はあったが、いると聞いて心を撫で下ろす。
『あなたを1人にしてしまったこと。そして、また会えたこと。』
「?どうして?私は1人じゃないよ。どこにいるの?もしかして、ケガしてるの?」
木はまた、黙ってしまった。悲しげに寂しそうに言った。
『彼女はもう、あなたの一緒にいられない。彼女は、あなたとは違うものになった。』
「一緒にいるんじゃないの?違うってなに?」
『彼女は、私と同じ森になった。だから、もう一緒にはいけない』
それを聞いて、少女はわかった。もう、彼女自身に会うことはできないのだと。
少女は泣いた。
『泣かないで。』
ふと、懐かしい声が耳をかすめる。
涙が、ふいに止まった。
『泣かないで。』
「どこ?どこにいるの?」
懐かしい声に、あたりをしきりに探す。
『ここ』
「…わかんないよ」
姿がないことにまた、涙がにじむ。
『ごめんね』
「もう、一緒にいられないの?」
『うん』
涙が止まらない。
「やだ…やだよ…」
『私もやだ。でもできない』
少女は涙を止められず、目を赤くしながら別れを惜しんだ。
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